見えないカンジ

あの漢字の偏は「木」だったけ？「禾」だったけ？

 

霞がかって見えない漢字。

 

何だかすごくあやふやな漢字。

 

嗚呼、もしかすると、「小」かも。

 

 

導き出したいのはどんなカンジ？

 

賢い感じ？

 

いや、違う。そうじゃなくて・・・・・

 

 

嗚呼、悩みすぎて旁の方もおかしく思えてきた。

 

 

ん～、まずは初めに戻そう。

 

色んなこといっぺんに考えるからこんがらがるのさ。

 

フラットにしてさ。

 

 

そうそう。漢字ってのは成り立ちや意味から考えると、出てくるものさ。

 

 

ホントは分かってるはずなんだ。

 

覚えてるはずだし。

 

 

 

良い子、悪い子、優しい子。

 

強い子、ズルイ子、弱虫さん。

 

 

さあ、皆で考えよう。

 

 

導き出したいのはどんな感じ？

 

懸命な感じ？

 

理想的な感じ？

 

いや。一番、自分らしい感じ。

 

 

 

生まれるためのこと

生まれるために、ずいぶん時間がかかってしまいました。

彼女はうつむき加減に、そう話し始める。



ひらりひらり、銀杏の葉っぱ。



薄暗い冬の日の地下鉄の中。

目前に座った黒い服の人々。

彼らは誰しも、YESと答えたわけではないのだ。

誰もそんなこと、覚えてはいないのだ。

気づいたらここにいたのだ。

皆どこへ向かうのだ。



受身になっては詰まらない。

たとえ、勝手に始まったゲームだとしてもさ。

どこまでいけるか試してみたいだろう。




どきどきどき。心臓の音。

どくどくどく。血流の音。




胎児は眠る。

夢見て眠る。

それはこれから始まる一生のこと。


死ぬ瞬間。

夢見て眠る。

それはここで終わる一生のこと。



当館でこのフィルムを上映するのは全部で三回でございます。

おや、お客様。ご覧になるのは何回目でございますかな？

分からない？？

それはお客様、ご自分で覚えておいて頂かないと・・・。

もしや一回目でございますかな？？

それとも三回目？それなら大変、後がない！

しかし私が察するに、お客様のそのお悩みよう・・・、

二回目でございましょう！

悩み多きが二回目にございます。

一番エキサイティングな上映でございますよ！

いやいや、三回とも同じフィルムなんですがね。

当館のフィルムは少々生きがよいものですから、

上演回数により内容もシバシバ変わってまいりますゆえ。

特に二回目は、どうなるやら私も想像がつきません。

出会うはずのない人物、行くはずのない場所、

たくさん出てまいりますよ！

さあさあ、上演開始のベルです！

早くお席にお着きになって！




ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ

それはいつもの目覚ましの音。

重たい体。

世界の中の、部屋の中の、皮膚の中の自分。





生まれるために・・・と申しましたがまだ生まれたわけではないと思います。

あたしもまだよく分からない。

多分これは難産ですよ。

全く困ったものです。

自分を自分で身ごもってしまうなんて。

彼女は頭を抱えて、目線は窓の外を見た。




ひらりひらり、銀杏の葉っぱ。



絵の中の胎児は眠ったまま。。




カフェイン中毒のその人は「君が好きだ」とうそぶく。

道路の外灯は悪気もなしに、二人を照らす。

疑わしい台詞にあたしは曖昧に笑う。

だいたい、無責任だよそんな言葉は。

ひかるひかる、銀の指輪。



ねえ、「好き」ってなんだろうか？

勘違いかい？

衝動かい？

本能かい？



それもやはり空＜クウ＞だろうか？




「気持ち」って物質は単体で直進しかしない。

跳ね返る性質なんてないんだよ。

もし返って来たのなら、それは別の「気持ち」を誰かが投げてくれたのさ。




人間臭くない人間なんて居やしないよ。

全てが空なんていう教えすら、僕には人間臭く感じる。

君は君である時点で、もう君は君臭い。

ああ。匂いがぷんぷんするね。





見返りは期待しない？

求めてしまうのが自然だろうか。

求めないのが人間だろうか。

本能のままに、居てはだめかい？






ひらりひらり、銀杏の葉っぱ。

幸せの色をしていたよ。

幸せってなんだろうか。

それを探しに来たんだよ。



敷き詰められた葉っぱの色。

いつかこんな光景を、見たことがあっただろう。

一面金色に紡がれた光の中で、遠い声を聞いただろう。



生まれてもいいよって。



その声に笑顔で答えた僕らが居る。ここに居る。



さあ、生まれておいで。

それは無責任な誘いかもしれない。

でも、見てみたいんだよ。

君の魂と呼ばれるものを。

それは勘違いかもしれない。

脳が生み出した、ただの副産物かもしれない。

ほんとは無いのかも知れない。

全ては空かもしれない。

でも感じたいんだよ。

君の気持ちを。



さあ、生まれておいで。

絵の中の胎児は目覚めを待ってる。

上映開始のベルが鳴る

僕らは同い年さ。

君の隣でフィルムを見るよ。




さあ、生まれておいで。

お祝いをしよう。

いつまでだって、待っているから。


さあ、生まれておいで。











これを友の体内で生まれを待つ君と、



世界の中で生まれを待つ僕へ。